【実録】気付かないように義母へのちょっとした仕返し 良好な関係だと思っていたのに……【スカッとしない】

「気付かないように義母へのちょっとした仕返し」

岡山県
こうちゃんママ

嫁姑の形だけの仲良しはいくらでもあるものだ。しかし、体裁を繕って上面だけの仲良しには、いずれガタがくるものである。私は大学時代から夫と付き合い、そして結婚した。結婚を決めた理由の中の一つに、義母の優しさや気心知れた仲だったということがあるのだ。付き合っていた頃、夫の実家にも何度か遊びに行っていた。行く度に義母は、優しい笑顔で私を迎えてくれた。

 夫は男三兄弟の長男ということもあり、息子に初めて紹介された彼女が嬉しかったのか、初対面でも居心地よく、何かと私を気にかけてくれる義母だった。息子が帰省する度に、彼女である私の様子を気にかけ近況を聞いて、「また連れてきなさい、ご飯をご馳走するから」と言っていたのだった。そんな気さくな義母だったこともあり、私も夫の実家へ何度か訪問していて義母とも良い関係だったため、結婚にも迷いもなく付き合って四年後に結婚したのだった。

 夫の実家は私達の居住している場所からは離れていたので、義父母と顔を合わせるのは年に数回しかなかったが、それでもお盆や正月、連休などには旅行も兼ねて帰省するようにしていた。そんなある日、嫁姑の仲がぎくしゃくすることが起きてしまったのだ。それは、夫の二番目の弟が結婚することになり、挨拶のため義弟の嫁が来ていたときのこと、私達も帰省していたこともあり、みんなで義母お手製の夕食を食べていた。

 これまで、義母は嫁である私には、「この家の台所は私の城だから、手伝ったり、入ったりしなくていいからね」と言っていた。しかし、嫁の立場というのもあり、料理の手伝いの声掛けやお膳を下げるなどの準備は率先してやっていた。相変わらずこの日も義母は、義弟の嫁に手伝わなくてもいい宣言をしていたのだ。が、義弟の嫁は「お義母さん、私がやります」と義母の城である台所へ侵入したのだった。そう、また追い出されると先読みしていた私、結果は「そう、ありがとう」と意外な返答だった。

 私には断固として、「入らなくていい」と言っていた義母だったが、義弟の嫁にはすんなり入城を許可しているではないか。唖然としている私に、義母は「本来なら台所に入れないのだけど、私も年を取ってきたら入城を緩和するわ」と。そして、台所での義弟の嫁の片付けの手際の良さに、「今度からあなたに任せるわ」とも言っていた。確かに、私は若かりし頃に結婚して、台所を任せるのはおぼつかなかったのは認めるが、よりによって、初めて訪問した義弟の嫁が、結婚十年目になる私より先に台所入城第一号になろうとは思わなかったのだ。挙句の果てには、義母に「気遣いできない長男の嫁」という無言のプレッシャーをかけられる始末だった。

 あれから、義母の台所への入城は私にも緩和されているが、家族が集まる場で、義母が口癖のように「義弟の嫁は良く気が付く、出来る嫁が来てくれて楽になった」と褒めるのだった。私は「台所に入らないで」と言った義母の言葉を信じて、かたくなに十年経過してしまった。毎回この口癖を聞くたびに、長男の嫁のプライドが傷つくのだった。

 私と義母の気心が知れている関係だからかもしれないが、最近では義母は、息子家族が帰省する時は、台所仕事のそのほとんどを私達嫁に任せるようになったのである。私は、義母は嫌いではないが、時折比べられる義弟の嫁のことのうっぷんを料理で仕返しをしているのだ。大皿に盛りつけられる料理に普段より少し多く調味料を足したり、義母の嫌いなきゅうりを小さく刻んでサラダに入れる、お皿が足らないと言って、義母だけ皿を変えたりとささやかな抵抗をしているのだ。どれも些細なことなので誰も気づいていない。「おいしい」を連発して和やかな宴となっているのだ。

おわり。

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