【スカッとする話】見下しママ PTAの雑務を手伝っていたママ友が見下していたので切った【擬両親】

「見下しママ」

春野日菜子は出産を機に退職をし、もう10年ほど専業主婦をしている。息子の直人も大きくなったので、そろそろ仕事を探そうと考えていた。
「いいよね、春野さんは。専業主婦とか羨ましい!」
これは、日菜子がママ友によく言われる台詞である。
こう言われたとき、日菜子は曖昧に笑うことしかできなかった。
直人の同級生のママは仕事をしている人ばかりで、専業主婦はあまりいない。
専業主婦は時間があると思われがちだが、毎日暇なわけではない。
専業主婦となると、小学校のPTAや町内会などで仕事を任されることが増えるのだ。忙しい共働き家庭の代わりに、色々なところに引っ張りだこになりがちである。

日菜子はそれを特に苦に思っていなかったし、忙しいときはお互い様だと思っていたので、快く引き受けていた。
特に、同じ町内会かつPTAでよく会う斎藤は、日菜子のことを頼りにしていた。
「ごめん、春野さん。登校時の横断歩道の旗振り係、代わってくれないかな?」
「いいよー」
「ありがとう!申し訳ないんだけど、町内会の輪番制のゴミ当番の日も仕事入っちゃったんだよね…」
「わかった、私が斎藤さんが当番の日もやっておくよ」
「いつもごめんね」
斎藤は申し訳なさそうに何度も頭を下げていた。そんな姿を見て、日菜子は自分ができることがあれば協力しようと決めていた。

ある時、町内会でお花見があった。
皆お酒が進み、ほろ酔いで気分よく会話に花を咲かせている。
日菜子は斎藤の隣に座り、仕事の愚痴を聞いていた。
「会社で色々あるんだね、斎藤さん大変なんだね」
「まあ結局、外で働くって大変なことなのよ。専業主婦の春野さんはわからないだろうけど」
「…そうだね」
「ていうか専業主婦やってて恥ずかしくない?周りみんな働いてるのに、春野さんって怠け者だよね。このままじゃダメだよ」
ビール片手に突然説教を始めた斎藤に対し、日菜子は硬直した。

斎藤は日菜子が返事をしないにもかかわらず、一方的に専業主婦である日菜子を罵倒し続けた。
「春野さんは人生舐めてるんだよね。甘ちゃんなんだよ。直人くんだって、自分の母親が無職とか恥ずかしいでしょ」
日菜子の中で、何かの糸がぷつんと切れた感覚がした。
これまで、斎藤はPTAや町内会の仕事をほとんど代わってほしいと頼んできていたのに、内心はこんなことを思っていたのか、と日菜子は腸が煮えくり返りそうだった。そして、日菜子はもう斎藤に頼まれても何も代わらないと決意した。
翌週、お花見での出来事はすっかり忘れてしまった様子の斎藤が、再び日菜子に頼みごとをしてきた。

「春野さんごめーん、忙しくてPTAのお便り書けてなくて…」
「そうなんだ」
「代わってくれない?」
「ごめん、私も働きだして忙しいんだ」
「え…」
元々大手企業に勤めており、資格を持っていた日菜子はあっという間に再就職を果たしていたのだった。
「もうPTAも町内会も代わってあげられないの。ごめんね」
「な、なんで急にそんな…」
「これまで怠け者だったからね」
笑みを浮かべる日菜子を見て、急に斎藤の顔色が変わった。

「お花見のときの言葉は違うの、あの、なんていうか、私が思ってることじゃなくて一般的な意見というか…」
「これからはPTAも町内会のお仕事もちゃんとやってね!じゃあ、また今度」
まだ何か言いたげな斎藤に別れを告げ、日菜子はその場から離れた。
その後、日菜子はこれまで通り自分が担当するPTAや町内会の仕事はきっちりこなし、斎藤の仕事は一切代わらなかった。
これまで全て日菜子に押し付けてきた斎藤はなにもできずオロオロするばかりか、ゴミ掃除当番をサボったりしたようで、町内会では嫌がられる存在となった。
自分を見下していた斎藤が困っている姿を見て可哀想だと思ったが、内心スッキリした日菜子であった。

おわり。

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